ある知り合いが入院して、手術を受けた。私はそのことを知らなかったのだが、最近久しぶりに再会して、その経験を聞いてみた。
イギリスには、NHSという国民総保険機関があり、基本的に医療は無料である。私も、一度ひどい風邪を引いて、薬を処方してもらいに行ったことがある。薬自体は薬局でお金を払って買わなければならないのだが、診察は確かに無料だった。
その知り合いも、検査から手術、入院にかかるすべての費用まですべて無料で、薬も、手術後の一週間分は無料だったと言っていた。
しかし、こういう医療制度にはもちろん問題がある。NHSは、緊急医療ではない限り、待ち時間が極めて長いのだ。その人の場合も、手術を受けること自体は去年の秋に決まっていたのだが、実際に手術を受けたのは今年の3月。半年ぐらい待ったことになる。その人の場合は日常生活に支障がないような問題だったらしいが、痛みを伴うような疾患でも、かなりの待ち時間が必要なことがあるため、時々ニュースで取り上げられている。
その人は、NHSの医療の質にとても満足だといっていた。私は、けっこうひどい目にあった人も知っているのだが、やはり個人によって経験はさまざまなのだろう。
それでも、問題を感じなかったわけではない。それは、老人医療とスタッフ不足。その人と同じ部屋に入院していた老人は、その人が退院して、通院治療に変わってからも、1ヶ月以上入院していたという。その理由は、その老人を家に帰しても、家にケアしてくれる人がいないから。つまり、自分で身の回りのことができるようになるまで、病院が老人ホームの役割まで果たさなければならない。こうした「病人」はベッドをふさぎ続けるため、他に手術を受けなければならない人は、どんどん先延ばしにされ、待ち時間が長くなってゆくようだ。
NHSは、日本の国民保険同様、お金がかかりすぎるのが問題になっている。このため最近、スタッフ削減が多くの病院で行われており、残ったスタッフへの負担が大きくなっている。その知り合いが知り合った看護士さんたちも、一回12時間というシフトに耐え、しかも、50人ぐらいの病人を3人程度で担当していたという。ニュースでは、イギリス人看護士の海外流出、特にオーストラリアへの流出が深刻だと言っていた。
イギリス人は、無料医療制度を大変誇りにしているのだが、なかなか悩みの深い問題である。

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posted by kappa at 16:03| ロンドン

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